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普通のガラスが量子チップになった。フェムト秒レーザーで3D光子回路を刻む技術が登場した

フェムト秒レーザーで普通のガラスの内部に3D光子回路を刻み、量子チップを作る技術が登場。特殊素材なしで量子コンピューティングの基盤を作れる可能性が開かれた。実用化は遠いが、素材コストの障壁を下げることで量子技術の裾野拡大が期待される。

AutoMedia Desk
2026/03/28 12:05
5分
更新 2026/03/28 12:05
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普通のガラスが量子チップになった。フェムト秒レーザーで3D光子回路を刻む技術が登場した

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シリコンでもダイヤモンドでもない。普通のガラスだ。

そのガラスの内部にフェムト秒レーザー(1000兆分の1秒のパルスを発するレーザー)を照射することで、3次元の光子回路を形成できる技術が発表された。量子コンピューティングに必要な「量子チップ」を、特殊な素材ではなく日常的な材料で作れる可能性が開かれた。

フェムト秒レーザーは何をしているのか

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フェムト秒レーザーとは、パルスの持続時間がフェムト秒(10のマイナス15乗秒)単位の超短パルスレーザーだ。人間の感覚では「一瞬」だが、その瞬間にガラス内部の微小領域だけを改質できる。

このレーザーをガラスに照射すると、照射された部分だけ屈折率が変わる。光の通る道が変わるということだ。この「光の道」を三次元的に設計すれば、光子(フォトン)が特定の経路を通る回路が作れる。

従来の量子光子回路は、特殊なシリコン基板やリチウムニオブ酸塩などの結晶素材の上に、リソグラフィー(微細加工)で2次元的に刻まれていた。それが今回の技術では、ガラスの中に3次元的に刻める。

3次元になると何が変わるか。回路の密度が桁違いに上がる。2次元の基板上では隣の回路との干渉を避けるためにスペースが必要だが、3次元なら上下方向にも回路を配置できる。

なぜ「ガラス」が重要なのか

量子コンピューティングの最大の障壁はコストとスケーラビリティだ。

超伝導量子ビット(GoogleやIBMが使う方式)は、絶対零度付近まで冷却する装置が必要で、1台あたり数億円から数十億円かかる。イオントラップ方式も高度な真空装置が要る。

光子量子ビットは、室温で動く。冷却装置が不要だ。しかし光子回路を作るための素材が高価で加工が難しかった。

そこにガラスが来た。ガラスは安い。地球上でほぼ無限に手に入る。製造プロセスも確立されている。そして今回、そのガラスにレーザーを当てるだけで量子光子回路が作れることが示された。

「高い素材を精密に加工する」から「安い素材にレーザーを撃つ」へ。製造コストの構造が根本的に変わる可能性がある。

実用化はいつか

正直に書くと、まだ遠い。

現在の実験はプロトタイプ段階で、実用的な量子計算に耐えるエラー率の低さは実現できていない。光子の損失(伝搬中に消える問題)も解決すべき課題として残っている。

しかし素材のコスト障壁が下がることの意味は大きい。量子コンピューティングが「一握りの巨大テック企業だけが持てる技術」から「大学の研究室でも試作できる技術」に変わるかもしれない。裾野が広がれば、予想外の応用が出てくる。

Googleの量子超越性実証(2019年のSycamore)が「量子コンピュータは本当に古典コンピュータを超えられる」ことを示したとすれば、今回の研究は「量子コンピュータを安く作る道があるかもしれない」ことを示したと言える。

日本の研究者にとっての意味

日本は光子量子コンピューティングの研究で世界的に強い。理化学研究所、NTT、東京大学のグループが光子量子ビットの研究を長年進めてきた。

ガラス基板+フェムト秒レーザーという組み合わせは、日本の光学技術・レーザー加工技術が世界トップクラスであることを考えると、日本の研究機関が追試・発展させるのに最も適した分野の一つだ。

量子コンピューティングの国際競争は加速している。米国・中国が兆円単位を投じる中で、日本が勝てる領域があるとすれば、このような「素材+精密加工」の交差点かもしれない。

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