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AppleのApp Storeは独占なのか——2026年版、世界で続く法廷闘争の全体像

EpicとAppleの戦い、EUの制裁金、日本での規制強化。App Storeをめぐる世界各地の裁判と規制の現状を完全整理。Appleはなぜ税金を守り続けるのか、2026年現在の勝敗表をまとめた。

AutoMedia Desk
2026/03/29 13:37
5分
更新 2026/03/29 13:37
AppleのApp Storeは独占なのか——2026年版、世界で続く法廷闘争の全体像

あなたがスマホにアプリを入れるたびに、AppleはDevelopersから最大30%を取り続けている。その「Apple税」をめぐって、世界中の法廷で何年も戦いが続いている。

そもそも何が問題なのか

Appleがいま問われているのは、シンプルな問いだ——「iPhoneというデバイスを持つ人が10億人以上いる中で、そこへのアクセスを一社が独占してもいいのか?」

App Storeはアプリ配布の唯一の経路だ。開発者はAppleの審査を通らなければアプリをiPhoneユーザーに届けられないし、有料アプリの決済もAppleのシステムを使わなければならない。その手数料が15〜30%。世界に10億台以上存在するiPhoneへのゲートを握っていることで、Appleは毎年数兆円規模の手数料収入を得ている。

Epic対Appleから始まった大きな波

最も注目された裁判は、Fortniteを作るEpic Gamesが2020年に米国で起こしたものだ。Epicは独自決済システムをApp Store外で実装し、意図的にApp Store規約に違反。Appleに追い出された後、「これは独占行為だ」として訴えた。

2021年の判決でAppleはほぼ勝訴した。しかし一点だけ負けた——「開発者がアプリ内でApp Store外の決済サイトへのリンクを貼ることを禁止してはならない」という命令が下された。

ところがAppleはこの命令に従わなかった。外部リンクを貼ることを「認める」ふりをしながら、その利用に対して追加手数料を課したのだ。裁判所はこれを「故意の非遵守」と認定。2024年から2025年にかけて制裁手続きが進んでいる。

EUデジタル市場法:最も厳しい戦場

EUは2024年、デジタル市場法(DMA)の施行により、AppleにiOSでのサードパーティApp Store解禁を義務付けた。Appleは形式的には従ったが、「コア・テクノロジー・フィー」という新たな手数料を設け、年50万件以上のインストールがあるアプリには1件あたり0.50ユーロを請求することにした。

EU当局はこれを「実質的な妨害」と判断し、2025年にAppleとMetaを同時に制裁金処分の対象とした。Appleは引き続き異議を申し立てている。

日本でも動き始めた

日本でも2024年に「スマートフォンにおいて利用される特定ソフトウェアに係る競争の促進に関する法律」が成立し、2025年から施行されている。App Store外の決済システム利用を事実上禁止する行為が規制対象となり、公正取引委員会がAppleへの調査を強化している。

日本はiPhone市場占有率が世界最高水準(約70%)であるため、この規制の影響は特に大きい。開発者が独自決済を使えるようになれば、日本のApp市場に実質的な価格競争が生まれる可能性がある。

Appleはなぜ守り続けるのか

Appleの主な反論は2点だ。1つ目、App Storeの手数料はセキュリティ・プライバシー保護のコストであり、ユーザーを悪意あるアプリから守っている。2つ目、iPhoneというエコシステムへの多大な投資に対するリターンとして正当だ。

この主張が一定の説得力を持つのは確かだ。iPhoneはAndroidより安全だというデータも存在する。サードパーティストアを解禁したEUでは、早速悪意あるアプリが流入したという報告も出ている。

2026年現在の勝敗表

米国:Appleが概ね優勢。外部リンク命令で揉めているが、全面開放には至らず。
EU:Appleは追い詰められている。DMA違反の認定を受け、是正命令が続く。
英国:競争当局が調査継続中。判断はまだ先。
日本:法整備完了。実際の執行フェーズへ移行中。
韓国:2021年にアプリ内代替決済を義務化する法律を世界初で成立させた。

Appleにとって最大のリスクはEUだ。DMAの要件をAppleが本気で守らないと判断されれば、EU全体での年間売上高の10%(最大で20%)の制裁金が課せられる可能性がある。Appleの年間売上は4,000億ドル規模であり、理論的には最大800億ドルの罰金が存在しうる。

Appleのビジネスモデルは今、世界中の規制当局との長期戦を強いられている。変化は来る——問題は「いつ」か、そして「どこまで」かだ。

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