Metaが「脳のデジタルツイン」を作った。700人分の脳スキャンで訓練、あなたが何を見て何を感じるか、AIが事前予測する
MetaがfMRI脳スキャン720人分で訓練したAI「TRIBE v2」を公開。動画・音声・テキストに対する脳反応を事前予測できる「脳のデジタルツイン」。神経科学研究に使えるが、広告と組み合わせると何が起きるか——
Metaが脳神経科学AIの新モデル「TRIBE v2」を発表した。700人以上の被験者から1,000時間以上のfMRI(脳機能イメージング)データで訓練されたこのモデルは、動画・音声・テキストに対して人間の脳がどう反応するかを、実際にスキャンせずに予測できる。
TRIBE(Trimodal Brain Encoder)v2の能力を一言で言えば「脳のデジタルツイン」だ。映画の1シーンを見せると、脳の約7万箇所のボクセル(微細な領域)がどう活性化するか、AIがシミュレートする。前バージョンの1,000パーセルから70倍の解像度向上。精度は従来手法の2〜3倍に達する。
もともとは神経科学研究のコスト削減が目的だ。fMRI実験は1セッション数十万円、IRB(倫理審査委員会)の承認も必要で、得られるデータは少数サンプルからのノイズまみれのものが多い。TRIBE v2があれば、研究者はコンピュータ上で仮説を検証してから、ヒトを使った実験に進める。
しかしこの技術が「広告と組み合わされたら何ができるか」を考えると、話は別になる。MetaはFacebook・Instagram・Threads・WhatsAppを抱え、世界で最も大量の人間の行動データを持つ企業だ。「この映像を見た人は○○秒後に購買衝動が高まる」という予測が、理論上は可能になる。
Metaは「神経科学研究と臨床応用のために公開する」と言い、モデルの重み・コード・デモを研究者向けにCC-BY-NC-4.0(非商用ライセンス)で公開している。2025年のAlgonautsコンテスト(260チーム参加の脳エンコーディング競技)でも1位を獲得した技術だ。
「非商用」のライセンスは今のところ守られている。だが、かつてFacebookが「ユーザーデータを売らない」と言い、後に利用規約の解釈を拡大し続けた歴史を知っているなら、この発表を手放しで喜ぶのは難しい。
ゼロショット予測——つまり、訓練していない未知の人物に対しても脳反応を予測できる能力——が確立されたことで、この技術の汎用性はさらに上がった。「あなた専用のモデルを作らなくても、あなたの脳反応は予測できる」時代が来ている。
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