2035年、電力供給の覇権争い。核融合・核分裂・天然ガスが三つ巴で殴り合う
AIの電力需要300%増を前に、核融合・核分裂・天然ガス・再エネが2035年の電力覇権を争う。HelionはOpenAIに50GW供給を交渉中。勝者はまだ決まっていない。

AIの電力需要が2035年までに300%増加するという予測の下、電力供給の主導権をめぐる競争が激化している。
天然ガスは現在、米国の電力の40%を供給する。安価で実績がある。だが中東戦争でカタールのインフラがイランのドローン攻撃で損傷し、供給網の脆弱性が露呈した。さらにガスタービンの受注残は2030年代初頭まで解消しない見込みだ。
この遅延が、核分裂と核融合のスタートアップに時間を与えている。
核分裂(SMR)の現在地
Googleが顧客となるKairos Powerは、実証炉Hermes 2の建設を進行中。Sam Altmanの白紙小切手会社と合併したOkloは2028年の商用運転を目指す。Amazonが出資するX-energyは2030年代前半、Bill Gates創設のTerraPowerはMeta向けに2030年の商用運転を計画する。
量産によるコスト削減が前提だが、現時点で原子力の発電コストは約170ドル/MWhとLazardは試算する。
核融合の時間軸
Commonwealth Fusion Systemsは来年、実証炉の起動を予定。400MWの商用炉Arcは2030年代前半にバージニア州で稼働する計画だ。
最も野心的なのはSam Altman出資のHelion。2028年までにMicrosoft向け商用炉Orionを建設し、OpenAIに2030年までに5GW、2035年までに50GWを供給する交渉中とされる。これを実現するには2030年までに800基、その後5年で7,200基の炉が必要になる。
米国は昨年、全電源で63GWの新規容量を追加した。Helionが年間10GW近い容量を単独で追加できれば、天然ガス産業が昨年追加した分を1社で上回ることになる。
コストの壁と再エネの脅威
核分裂は約170ドル/MWh、核融合は初期に約150ドル/MWh。天然ガスは約107ドル/MWhだが上昇傾向にある。
しかし太陽光+蓄電池は補助金なしでも50〜130ドル/MWhの範囲にあり、3つすべてと競合する。Form EnergyはGoogleに30GWhの鉄空気電池を供給する契約を結んだ。XL Batteriesは古い石油タンクを蓄電設備に転用する技術を持つ。
リチウムやコバルトを使わない新型電池が長期蓄電コストを劇的に下げれば、核も化石燃料も不要になる可能性がある。
2035年の電力市場は、まだ白紙だ。
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