連邦裁判官がAnthropicブラックリスト指定を違憲と判断。「典型的な修正第1条の報復だ」
米連邦判事がAnthropicのブラックリスト指定を「修正第1条への報復」と判断し仮差止命令。国防省はClaudeの軍事利用制限に反発し報復的措置を取ったが、法的根拠を示せなかった。

米連邦地裁のリタ・リン判事が、トランプ政権によるAnthropicのブラックリスト指定に対し仮差止命令を出した。国防省(DoW)がAnthropicを「サプライチェーンリスク」に指定した措置について、「典型的な修正第1条(言論の自由)への違法な報復」と断じた。
何が起きたのか
国防省は2025年3月からAnthropicのClaude AIを採用し、1年間にわたり問題なく運用していた。 転機は、国防省がClaudeを軍事プラットフォームに展開しようとした際に訪れた。
Anthropicは「米国民への大規模監視」と「完全自律型致死兵器」の2用途を例外として制限するよう求めた。 自社テストで市民権侵害のリスクを排除できなかったためだ。
これに対し国防省はAnthropicを「ユートピア的理想主義」と批判。トランプ大統領はTruth SocialでAnthropicを「急進左派のウォーク企業」と呼び、ピート・ヘグセス国防長官はXで「傲慢と裏切りの教科書的事例」と投稿した。両者とも、ブラックリスト指定の法的根拠を示さなかった。
裁判で何が明らかになったか
口頭弁論で政府側弁護士は、ヘグセス長官がブラックリスト指定を命じる法的権限の根拠を「認識していない」と認めた。公開声明に法的効力がないことも認めた上で、なぜそのような声明を出したのかと問われ「分からない」と答えた。
リン判事は、サプライチェーンリスク指定が「これまで国内企業に適用されたことはなく、主に外国の諜報機関やテロリストを対象とする制度」であると指摘。Anthropicが指定された唯一の理由は「報道を通じた敵対的な態度」だったと記録が示していると述べた。
さらにヘグセス長官の主張には矛盾があった。Anthropicが「国家安全保障への重大な脅威」だと主張する一方で、国防生産法に基づきサービス提供を強制できるほど「国家安全保障に不可欠」だとも主張していた。
被害と影響
ブラックリスト指定後、Anthropicは3件の商取引を即座に失い、他の潜在的パートナーとの交渉も停滞した。リン判事は、今後5年間で数十億ドル規模の契約損失が見込まれると認定した。
仮差止命令は7日間の行政停止付きで発効が猶予される。政府側が控訴裁判所に緊急停止を求める時間を与えるためだ。国防次官のエミル・マイケル氏はXで判決を「恥ずべきもの」と呼び、「事実誤認がある」と主張した。
一方、退役軍人指導者らはAnthropicを支持する意見書を提出。ブラックリスト指定の継続は「軍事即応性と作戦上の安全を実質的に損なう」と警告した。
AI安全の主張が政府との対立を招き、連邦裁判所が「AI企業の発言の自由」を認めた。この判決は、AI企業が政府に対してどこまで「ノー」と言えるかの前例になる。
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