Rivianの創業者が、「工場ロボットはカートホイールなんかしない」と断言。産業AIに$500Mを集め、RJ Scaringeがヒューマノイドブームへの逆張り宣言
EVメーカーRivianの創業者RJ Scaringeが設立したMind Roboticsが、シリーズAで5億ドルを調達。「カートホイールに工場の価値はない」とヒューマノイドブームへの逆張りを宣言しながら、同じ週に12億ドルが産業AIへ流れ込んだ。

EVメーカーRivianの創業者RJ Scaringeが、EV業界の外で静かに「第2の革命」を起こしている。
彼が設立した産業ロボットスタートアップMind Roboticsが、2026年3月11日、AccelとAndreessen Horowitzが共同主導するシリーズAで5億ドル(約750億円)を調達した。評価額は約20億ドル。2025年末の創業からわずか数ヶ月で、累計調達額は6億1500万ドルに達した。
「カートホイールに工場の価値はない」——Scaringeの挑発
ヒューマノイドロボットが資金を集め続けるなか、ScaringeはThe Wall Street Journalのインタビューでこう言い切った。
「カートホイールをすることは、製造現場に価値を生まない」
Teslaのオプティマスをはじめ、二足歩行で派手なパフォーマンスを見せるヒューマノイドロボットへの当てつけとも取れる発言だ。Mind Roboticsが狙うのは、そういった「見た目の派手さ」ではなく、工場の床で本当に役に立つロボット——つまり、人間のような器用さと適応力を持った産業ロボットだ。
Rivianの工場データが「最強の教科書」になる
Mind Roboticsの核心的な強みは、親会社Rivianのアドバンテージだ。Rivianのイリノイ工場で日々蓄積されるEV製造の生産データを、ロボットのAIトレーニングに活用する。
現在の産業ロボットは、繰り返し作業や寸法が安定した工程には強い。だが工場全体の付加価値の多くは、「人間的な器用さ・判断・物理的推論」を必要とする工程に集中している。そこがクラシックなロボットでは手が届かない領域だ。
Mind Roboticsは「AIの基盤——モデル、ハードウェア、デプロイインフラ——を構築してそのギャップを埋める」と声明で述べている。
1週間に12億ドル——Physical AIに流れ込む資金の奔流
Mind Roboticsだけではない。同じ週、物理AIとロボット分野では:
- Rhoda AI(家庭用ロボット基盤モデル):$450M / 評価額$1.7B
- Sunday(物流用家庭ロボット):$165M
- Oxa(自律走行):$103M
合計、たった1週間で12億ドル超がPhysical AI分野に流れ込んだ。2月にはFigure AIとSkildAIが計$14億を調達しており、2026年は年間200億ドル超のロボティクス投資に達するペースだという。
「AIはソフトウェアを食い尽くした。次は物理世界だ」
Rivianはすでに自社開発のカスタムシリコン(自動運転向けAIチップ)を持っており、ScaringeはそのチップをMind Roboticsへ供給する可能性を示唆している。「ロボティクスプロセッサとして非常に相性がいいはず」と語った。
テック業界では「ソフトウェアはAIに書かれるようになった、次のフロンティアは物理世界だ」という認識が急速に広まっている。LLMの進化がソフトウェアエンジニアの需要を圧縮する一方で、ハードウェアエンジニア・ロボティクス人材の需要は急上昇している。
ScaringeとRivianは「二兎」を追っているか
Mind RoboticsはRivianがスピンオフした2社目の企業だ(1社目は電動モビリティのAlso)。Scaringeは会長として両社に関与しつつ、Mind RoboticsのCEOは別に据えている。
2026年末までに大量のロボットをデプロイする計画とのことで、RivianのEV工場が最初の「実験場」になる見通しだ。
日本への影響は
日本はトヨタ、ファナック、安川電機など、世界トップクラスの産業ロボット企業を持つ国だ。だがそれらの強みは「精密・再現性・耐久性」——まさにMind Roboticsが「古いモデル」と呼ぶものに近い。
AIによる「器用さと適応力」の習得が実用化されると、日本の産業ロボット業界の競争優位が揺らぐ可能性がある。Scaringeが描く未来が現実になれば、日本が追い掛ける側に回る可能性もゼロではない。
ヒューマノイドがカートホイールを踊るあいだ、産業の最前線では別のゲームが静かに始まっている。
この記事が役に立ったら共有してください
